青い海と空のみちのく八戸から 波動はるかに 第8回 最も小さきこと
“素粒子”の句は8月例会時に与えられた宿題の一つ『ミニ』に応じたものである。初めての経験で、作句には苦労するのだが、宿題『ミニ』を考えているとふと思い浮かんでくることがあった。中学1,2年生の頃のことと思う。学校の図書室にあった読み物か、あるいは少年雑誌の中にあったのかは定かではないが少年用の読み物の中にあった「曽呂利新左エ門」の話を思い出した
豊臣秀吉の御伽衆の一人で“頓智の曽呂利”と言われた歴史上の人物である。家来を集めた席で秀吉が課題を与えた。一つは『大きなもの』もう一つは『小さなもの』それを短歌(狂歌)で競わせるという趣向だ。
「天と地を団子に丸め手に乗せてぐっと飲めども喉に触らず」細川藤高という家来がこれを詠んで皆を感心させると、曽呂利が「天と地を団子に丸めて飲む人を鼻毛の先で吹き飛ばしけり」と詠み大いに受けたという。私の記憶は曽呂利の歌の(飲む人)が(舌に乗せ)にかわっていたがほぼ正確だった。ところが、“小さいもの”は全く記憶になかった。調べてみると、曽呂利の最も小さい歌は「蚊のこぼす涙の海の浮島の真砂拾いて千々に砕かん」というものだった。
私はそこで、川柳でこんな遊びに参加できたら面白いだろなと、思いついた。そおしてあれこれ考えをめぐらしたとき「素粒子」が浮んできたというわけである。物質の最も小さきものを素粒子というのだから、これ以上小さいものはない。曽呂利の歌より私の句の方が小ささでは断然勝っているはず、もしも私が秀吉の会に参加していたら、秀吉からの賛辞といっぱいの褒美を授かったに違いない???